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明治大学大学院<総合芸術系> 管啓次郎研究室の書評ブログ

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

立ち話4 清岡智比古さん(フランス研究)

清岡さんといえばカリスマ・フランス語教師、わが同僚です。外国語の勉強って、どうするのがいいんでしょう。 すぐできるのは音読かな。毎日10分が理想だけど、10分はけっこう長いので5分でも。もちろんシャドーイングとかオーヴァーラッピングを入れてもい…

小林エリカさん紹介【文=管啓次郎】

【7月23日、青山学院大学にて開催されたASLE-Japan文学・環境学会例会では小林エリカさんによる特別講演が行われました。冒頭の管啓次郎による講演者紹介をここに採録します。】 小林エリカさんをご紹介します。といっても、改めてご紹介する必要すらないこ…

まるで昨日のことのように【評=大洞敦史】

韓石泉『韓石泉回想録 医師のみた台湾近現代史』(韓良俊編、杉本公子・洪郁如訳、あるむ、2017) 台湾の町を歩くと、1945年以前の世界を身近に感じさせるものに出会うことがしばしばある。この台風の通り道で毅然と立ち続けている木造の民家や駅舎、壮麗な…

変な話【評=中野行準】

杉浦日向子『百物語』(新潮文庫、1995) <良い話>よりも<変な話>に惹かれる。うまいオチがついているわけでもなければ、読み終わってスッキリするということもないような、なんだかよくわからない<変な話>。そんな<変な話>を求めて、このところ私が…

文字に名残る心【評=管啓次郎】

荒川洋治編『昭和の名短編』(中公文庫、2021) 心は消えてゆく。死ねば忘れられる。文字は残る。Scripta manentというラテン語フレーズの真実を思う。心を文字にしようとするのが小説。名作として残っている作品には、作者と読者がある時代に共有した大きな…

立ち話3 中野行準さん(読書家)

この春までうちの大学院生だった中野行準くんです。藤枝静男についてのおもしろい論文で修士号をとり、いまは出版社でバイトをしながら本を読んでいます。このバイトもけっこう長くなったよね。 1年半ぐらいですかね。 どんな仕事をするんですか。 まあ、雑…

ダブルコーラの日々【評=管啓次郎】

海野文彦『復帰前へようこそ おきなわ懐かし写真館』(ゆうな社、2012) 食い入るように見入った。懐かしい沖縄の写真、といってもこっちはその時代をまるで知らないわけだが写された場所や事物を実際に経験してきた人は何人か知っているし、ぼく自身がヤマト…

夏子の漂流の物語【評=管啓次郎】

与勝海星(上原武久)『沖縄戦史 対馬丸沈没』(沖縄文化社、2018) 対馬丸事件を思い出そう。1944年、戦局の悪化する沖縄から鹿児島へと学童生徒が疎開する。疎開船は8月22日夜、米軍の魚雷により撃沈され、千数百名が亡くなった。うち子供たちは800名近く…

「接ぎ木」という方法【評=中野行準】

桑木野幸司『ルネサンス 情報革命の時代』(ちくま新書、2022) ルネサンスときいてまず思い浮かべることはなんだろうか。レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ダンテやペトラルカなどの大芸術家たちの成し遂げた芸術的達成か、あるいは彼らの輝かし…

立ち話2 林真さん(独立研究者)

林真さんです。明治大学総合芸術系で一昨年修士号をとってから、作家兼独立研究者として活動しています。毎日どんなふうに暮らしていますか。 お昼ごはんをだいたい自分で作るようにしているんですよ。それから買い物に出て、散歩して、明日の昼と夜の何らか…

ゼラニウムってどんな花?【評=林真】

カシア・ボディ『ゼラニウムの文化誌』(富原まさ江訳、原書房、2022) ゼラニウムという花の名は、妙に記憶に残る響きをもっていないだろうか。私は長い間、ゼラニウムという呼び名が実際にどの花をさすのかさえ知らなかった。そもそも、広くゼラニウムとし…