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明治大学大学院<総合芸術系> 管啓次郎研究室の書評ブログ

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

清水発世界行き、というか【評=管啓次郎】

さくらももこ『またたび』(新潮文庫、2005) 『ちびまる子ちゃん』が一世を風靡していた時代ずっと日本にいなかった。出会ったのは作者のさくらももこさんが亡くなってからで、むちゃくちゃにおもしろい漫画だと思った。小学生の普遍=不変の体現なりき。先…

立ち話14 波戸岡景太さん(アメリカ文学)

波戸岡さん、本屋さんによく行くでしょ? しかもお子さんたちを連れて。目的はなんでしょうか。 図書館でいっぱい借りてくるということを、子供がちっちゃいときはよくやってたんですけど、本屋さんに行くということは、まずは背表紙を見にいくことだと思う…

南端を探す【評=谷口岳】

真木悠介『南端まで——旅のノートから 定本 真木悠介著作集 IV』(岩波書店、2013) 「南端」とはどのような場所だろう。その言葉から人がイメージするのはどのような風景か。本書を手に取ってまず目を引かれるのは、エッセイのページとページのあいだに挿入…

のらくろはどこにでもいる、必ず【評=管啓次郎】

田河水泡『少年漫画詩集』(教育評論社、2021) 「漫畫の犬が抜け出して/肉屋の前にいるなんて/そんなばかげたことはない/君の目玉の間違いと/皆んなは僕を笑うけど/あれは確にのらくろだ」そんな詩行を含む詩のタイトルは「のらくろ」。おなじみの白黒…

猿蟹合戦と鼠スッポン合戦【評=林真】

斧原孝守『猿蟹合戦の源流、桃太郎の真実——東アジアから読み解く五大昔話』(三弥井書店、2022) 昔話は流動する。そのことを教えてくれる好著だ。「はじめに」で著者は次のように書く。 本書は「猿蟹合戦」をはじめ、「桃太郎」・「舌切り雀」・「カチカチ…

煌めく波を見るように【評=中村絵美】

テッサ・モーリス=鈴木、大川正彦訳『辺境から眺める アイヌが経験する近代』(みすず書房、2000、新装版2022) 東日本大震災の後、「絆」という字が、被災地域への連帯を示すための言葉としてテレビによく映し出されていた。すかさず別のだれかが、「絆」…

立ち話13 佐々木愛さん(美術家)

佐々木さんは画家ですけれど、少し前から木彫をさかんに作っていらっしゃいますね。 2017年からですね。ちょうど5年。 どういうきっかけで作りはじめたんですか。 母が木彫作家だったんです。小さいころ、母が制作しているのをずっと横で見ていて、私も彫っ…