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明治大学大学院<総合芸術系> 管啓次郎研究室の書評ブログ

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

「番猫肋身」なんと読む?【評=林真】

古川日出男『天音』(Tombac、2022) 音とともにある旅の詩だ。この詩――古川日出男による初の詩作品にして長編詩――のタイトルはどう読むか。「てんおん」で間違いないと思う。「天音」が「てんおん」であるのには理由がある。引用しよう(文字の置き方まで熟…

コーヒーと「海の女」たち【評=林真】

マーガレット・ウィルソン『アイスランド 海の女の人類学』(向井和美訳、青土社、2022) 海を進む漁船を想像してみる。そこに乗っているのは誰だろう。みな男性? なぜそう思ったのだろう。そう思う事態に<なっている>のだろう。 アイスランドで船長とし…

その鍵? 捨てなさい【評=管啓次郎】

Adrian Tomine, Intruders. (Faber Stories, 2019.) セリーヌ・シアマが脚本で加わっているジャック・オーディアール監督『パリ13区』を非常におもしろく見たが、まず冒頭でアッと思った。原作にエイドリアン・トミネの名がある。アメリカのコミックスが、部…