海野文彦『復帰前へようこそ おきなわ懐かし写真館』（ゆうな社、2012)
食い入るように見入った。懐かしい沖縄の写真、といってもこっちはその時代をまるで知らないわけだが写された場所や事物を実際に経験してきた人は何人か知っているし、ぼく自身がヤマトでの成長過程で経験してきた時空にもそれは重なってくる。今世紀に入ってから何度か訪れた沖縄の光景を思い起こしながら見てゆくと、じつにおもしろい。とりわけ魅力的なのが口に入るもの。ミッキージュース、アイスケーキ、アイスパイン、ベストソーダのダブルコーラ、冷やしレモン、ワシミルク。いずれも飲んだことも食べたこともないのにその味まで想像できて陶然となる。「アメリカ世」の沖縄の食文化の一端を手がかりに歴史に分け入っていくのもいいだろう。マンモス小学校、スケートリンク、遊園地、水上店舗、交通の諸相、すべてが興味深い。特に那覇にかつてあった「パイプライン橋」が気になって仕方がない。米軍施設なのに地域住民が自由にわたっていたというのだ。
