Coyote Reading

明治大学大学院<総合芸術系> 管啓次郎研究室の書評ブログ

立ち話15 桂星子さん(新聞記者)

 

桂さんは新聞記者ですね。経済新聞の文化部という、ちょっと変わった位置にいらっしゃるのかと思うのですけれど、どんなことを考えながらやっていらっしゃいますか。

 

経済新聞だから、という意識はあんまりないんですよ。そもそも私自身、経済新聞らしいことをいっさいせずに15年以上会社に勤めているので。

 

文化部に配属になったのはいつなんですか。

 

2017年の秋です。私、入ったのは校閲記者なんですよ。それから編集、紙面のレイアウトとか見出しをやる整理部に長くいて、それから文化部なので。新聞社の中では傍流中の傍流ですね(笑)。

 

文化部の中では、この分野は私がカバーするみたいな分担はあるんですか。

 

私は書籍というか、読書面を作っているところで、自分がいちばん好きなのは文芸です。

 

なるほど。じゃあ、もとは根っからの文学少女だったのでしょうか。

 

うーん、どうだろう。小学生のときはすごく本を読みましたね。でも中高に入ると、たぶん人目を気にする子供だったので、教室でずっと本を読んでると仲間はずれにされるでしょ? そういうのに耐えられないタイプだったから、あんまり読まなかったんですよ(笑)。

 

本の世界では、どういう分野に興味があるんでしょう。

 

何がおもしろいかな。

 

やっぱり文学ですか。

 

文学。大学生のときは三島由紀夫をずっと読んでました。

 

へえ。それは何に惹かれて?

 

文章。

 

ああ、そうなんだ。じつはぼくも今学期にゼミで使おうと思ってるのは三島の短編集なんですよ。

 

いちばん好きだったのは『美しい星』っていう、あの謎のSFなんです。やっぱりSFが好きですね。いちばんくりかえし読んでるのってSF作品かも。

 

へえ。それもおもしろいですね。この世とはちがう別の世界を感じたいからでしょうか。

 

何なんでしょうね。やっぱりエンタメとして読んでる部分と、世界を変えるものとして読んでる部分と、両方ある気がします。

 

そういう読書が自分の夢に出てくることって、ありますか。

 

ときどきありますね(笑)。

 

夢って何でしょうね。毎日、夢を見ますか。

 

毎日見ます。しかも私、現実と地続きの夢が多すぎて。夢見ても疲れるんですよ(笑)。取材してないのにもうしたと思っちゃったり、そういうのが結構多くて(笑)。

 

ぼくなんかもそうですよ。メールの返事を夢で書いたり。

 

そうそう、もう書いたつもりになっちゃって。そういうこと、たくさんあります。

 

夢って何なんでしょうね。ある意味では、脳が1日の経験をもう1回リプレイして整理しなおしてる、情報整理のための時間。だけどその中で、突然、訳のわからないおもしろいイメージが出てくることもあるし。

 

ありますね。むかし夢の中で、物語がワーッと流れて浮かんだことがあります。それさえ書き留めておければいまごろ作家になってたかも(笑)。

 

たしかにねー。夢の中だけで見たことのある場所、ありますか。

 

ありますよ。何度もおなじ場所を見る。

 

おもしろい!

 

2ヶ所あります。ひとつはすごく高いビルのエレベータなんですよ。それが絶対止まってくれないの。すごく怖い夢です(笑)。もうひとつ、ちょっとわからない暗い場所なんだけど、見るたびに「あ、まえも来た」と思うところがある。

 

へえー。おもしろいねえ。

 

でもどっちもハッピーじゃないんですよね(笑)。

 

暗い場所とは何なんでしょうね。

 

わからない。それこそSFとかで見たものが融合されているのかもしれません。

 

うん。

 

私、あんまり何にもないんだと思うんです。

 

え、すごい!

 

からっぽだと思う(笑)。

 

そうなんだ。

 

作家の人にいわれたことがあります。「あなた大事なものないでしょ」っていわれちゃって。

 

え〜(笑)。

 

けっこうすごいこといわれたけれど、作家ってやっぱりすごいなと思いました。

 

そんなこと、思っても口に出さなければいいのにねえ(笑)。

 

それが誰かは、まあヒミツです(笑)。