Coyote Reading

明治大学大学院<総合芸術系> 管啓次郎研究室の書評ブログ

立ち話14 波戸岡景太さん(アメリカ文学)

 

波戸岡さん、本屋さんによく行くでしょ? しかもお子さんたちを連れて。目的はなんでしょうか。

 

図書館でいっぱい借りてくるということを、子供がちっちゃいときはよくやってたんですけど、本屋さんに行くということは、まずは背表紙を見にいくことだと思うんですよ。背表紙がランダムに並んでいる棚を一緒に見たり、好きなように見せたり。それで意味があるようで意味がない並び方に慣れていくと、ネットで流れる記事をランダムに見たりするよりも、もう少しひろがりのあるものが出てくる。本屋には定期的に行かないと、1ヶ月から2ヶ月で中身が更新するので、そこを定点観測していく必要がありますよね。気がむいたから行くというのでは情報量に偏りがあるというか、流れが見えない。

 

変化を見ていく。

 

そうですね。

 

行くのは新刊書店ですか。

 

新刊書店とブックオフです。

 

ブックオフのヘヴィーユーザーだと聞いたことがあったけど(笑)。

 

そうそう。いま古本屋さんがあまりないし。ブックオフ自体も減ってきてるんですね。

 

あ、そうなんだ。

 

もうみんなネットで買っちゃうので。でも地域の特色が出るのはむしろブックオフですね。本屋さんは有隣堂と、アカデミアとかをやっているくまざわ書店。くまざわ書店はちょっと攻めたものを置くんですよ。ふつうのモールなどにも入っているけれど、専門書も置くし哲学書も置く。有隣堂は啓蒙書とかビジネス書が中心で売れるものが置いてあって。いまはネット上で在庫もすべて検索できて、どこの店舗に何があるかがわかる。それで全体の流通もわかるんですけど、それは新刊書の、会社によるマーケティングですよね。ブックオフも流通している本を集めちゃって、いろいろ対応してるんですけれど、あそこはそれぞれの店主の趣味もありますし、来る人たちに合わせるところもありますし、店ごとに揃えているものがちがう。新宿なんかだとサブカル的なものがものすごく充実していたり、店長の生真面目さによって空気がちがうのもおもしろい。きれいなところと汚いところ、整理されたところと雑然としているところなど、差がありますね。

 

へえ、おもしろいねえ。小中学生のころは読書の傾向もどんどん変わっていくと思うんですけれども、子供たちには基本なんでも買ってあげるほうですか。

 

両方ですね。基本的に、読ませたいものは私が買いますし、自分たちが読みたいものは小遣いで買うんですけれど、通帳制にしてるんで(笑)。上の子はマジックが好きなんですが手品の専門書って意外にないじゃないですか。

 

専門書あるの。

 

東京堂出版が出してるんですよ。まえから気になっていたんですが、では神保町の東京堂に行ってみようとなると、やっぱり他では見たことがないほど品揃えが充実している。

 

へえ。

 

そういうふうに考えると、本の流通って全国一律に見えて、やっぱり出版社と書店と顧客が密につながっているんだということがわかってきました。

 

そうですよね。むかしから駅前書店はどこでもその地域の住民の読書傾向を反映していたし。ところで、ぼくの悩みのひとつは本が増えすぎて置き場がないということなんですけれど、どうしてますか。

 

とにかくひとつのプロジェクトでひとつの場所に集めて、それが終わったら必ずしまって入れ替えるようにしています。そのためにスーツケースか紙袋を必ず用意して、まずぜんぶ入れて、出しながら片付ける。それが逆に、しまいながらだと、どうにもならない。必ず出しながら片付ける。

 

なるほどねー。いいこと聞いた。ぼくもそれを心がけたいと思います(笑)。ご自分のお仕事、書くことが中心かと思いますが、ずばりいって「読むこと」と「書くこと」の配分って、どう考えていらっしゃいますか。

 

ええっと、書きはじめないと読めない感じがするし、読みはじめると書けるんですけれど、その飽和状態にあるときは、どっちもしてない状態のほうが長いな、と(笑)。書きたい本と読みたい本を両方探して、それが合わさったときに動きだすっていうのが楽しいですね。